毒舌紳士に攻略されて
「アハハ」と乾いた笑いを漏らす。
でも私は心の中で「その通りです」と何度も頷いてしまった。

「でもねさっきは散々嫌なところばかり話しちゃったけれど、良いところも沢山あるのよ?だから結婚して今日まで一緒にいられたんだけどね。……めぐみちゃんも見つけてくれているかな?元気の悪いところも良いところも」

ハニカミながらそう話すお母さんに、私はゆっくりと頷いた。

確かに坂井君は苦手だ。
毒舌だし、ズカズカ言ってくるところあるし。……それにあの人に似ているし。
でも良いところだってある。
もちろん紳士的なところもだし、意外に優しいし。……助けてくれたし。

そうだ。完全に苦手で嫌な人じゃないから、こうやってズルズル彼の実家まで来てしまったんだ。
良いところを知ってしまったから――……。

何も言わない私に、お母さんは満足そうに微笑む。

「今日はそれだけで満足だわ。元気のこと、ちゃんと理解してくれていて嬉しい」

「いえ、そんな……」

私達はそういった関係ではない。だからそんなこと言われてしまうと、罪悪感で胸が痛む。

「じゃあ悪いんだけどまた手伝ってもらってもいいかな?主人に怒られちゃうから。……あっ、さっきの話は主人には内緒よ?」



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