毒舌紳士に攻略されて
「……はい」

照れたように指を鼻の前で立てるお母さんが可愛いな、なんて思ってしまった。

本当はここで『私は坂井君の彼女ではありません』って言いたいとことだけど、お母さんを前にそんなこと言えそうにない。
不本意だけど、今日だけは仕方ない。
坂井君の彼女のフリを続けよう。そう思いながら、食事の準備を手伝った。



「ところで元気、いつ結婚するんだ？」

お父さんの言葉に思わず大きな声で「は！？」と叫びそうになってしまった。
口の中に何も含んでいなくて幸いだった。
口の中に何か入っていたら、間違いなく吹き出しているところだった。


あれから四人で食事を楽しみ……と言いつつも、ただ坂井君の隣に座って笑っているだけで精一杯だったけど。
そして片付けを手伝い、お父さんが買ってきてくれたケーキを食べようという時だった。
突然、突拍子もない話をしてきたのは。

だけど全然冗談ではないようで、真顔でお母さんが淹れてくれた珈琲を飲みながら、私と坂井君を交互に見てきた。
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