毒舌紳士に攻略されて
その視線の意味が痛いほど理解できる。
きっと二人はこう思っているに違いない。
どうして彼女でもないのに、家に来たの?って――。
でもそれは私が一番思っている。どうして彼氏でもない人の実家にこうして来てしまったのかと。

三人が気まずい雰囲気になっているというのに、坂井君はというと全くそんな雰囲気を出していなかった。

「つーかさ、親父が昔から言ってたんじゃん。恋愛は先手必勝だって。丸め込めるなら丸め込めってさ」

「ちょっとみっちゃん?」

坂井君の言葉にお父さんがギョッとし、お母さんはお父さんを睨みながら信じられないと言いたそうに、ジリジリと詰め寄る間も、追い打ちをかけるように話を続ける坂井君。

「俺は親父とは違っていきなりキスしねぇし、ましてやヤッてねぇんだからマシだと思うけど?」

「おい元気!いい加減にしろ!今はそんなことを話しているんじゃないだろう!?」

お父さんの慌てっぷりに、お母さんの話も坂井君の話も真実なのだと実感させられる。
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