毒舌紳士に攻略されて
付けている香水でさえ完璧だ。
変に甘い香りとか、高級志向の香りはどうも好かない。
柑橘系の香りなら嫌がる人もいないだろうし。

「取り敢えず俺のオススメの店から回る形でいい?」

「あっ、うん。お願いします」

「了解」

少しだけ口角を上げて微笑み車を走らせる姿に、不覚にもドキッとさせられてしまった。
車内という密室も手伝ってのことだろう。
でなきゃ坂井君相手にドキッとするはずないし。

そう自分に言い聞かせながらひたすら前を向く。

だけどまさか開催場所までリサーチしてくれていたとは……。
私なんて、以前開催した場所を適当に回って決めればいいや。なんて安易的に考えていたというのに……。

きっと私とは違って営業部の坂井君は、忙しいんだろうな。
それなのにリサーチまでさせていたとは申し訳ない。

「あの、坂井君……」

「悪い!」

お礼を言おうとした時、ちょうど信号は赤に代わってしまい少しだけ急ブレーキが掛けられた。
それと同時に私が前のめりにならないようにと、坂井君は左手を伸ばしてきた。

「大丈夫か?」

「うっ……うん」

うまく言葉が出てこない。
本当にどこまで紳士的なのだろうか。
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