毒舌紳士に攻略されて
しかも車内どころか、車外にも聞こえてしまっているんじゃないかと思うほど、大きな声で。
しまいには涙を流す始末。

そんな坂井君をただ呆気にとられながら見つめていると、涙を拭いながらクシャッと顔を崩した。

「やっぱ俺、佐藤を嫁にしたいわ」

「……はっ！？」

またまた突拍子もない話に、つい本音が漏れてしまい慌てて口元を手で覆ったものの、坂井君は気にする様子を見せることなく、少年のように笑ったまま。
そして長い手がゆっくりと伸びてくると、大きな手が私の頭上を優しく触れた。
くすぐったさに一瞬目を瞑ってしまうものの、その手のぬくもりがあまりにも優しくて、ドキドキしたくないのにドキドキさせられてしまう。

「佐藤は忘れているかもしれねぇけど、俺は佐藤のそういうところがすっげぇ好きなんだよね」

「――え？」

意味深な言葉に少しだけ顔を上げれば、目を細め愛しそうに私を見つめる坂井君の姿が視界を捉えた瞬間、ギュッと心臓を締め付けられてしまった。
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