毒舌紳士に攻略されて
でも当たり前な話だよね。
だってあの時、みんなの前で坂井君は私を助けてくれて、そのままふたりで抜けてしまったのだから。
週明けの月曜日の退社時には、すっかりと噂が社内中に広まってしまっていた。

それからというもの、今のように同じ部署の先輩にはきつく当たられ、今まで以上に仕事を押し付けられる始末。
そして社内を歩けば、コソコソと噂されるし時には陰口を言われたりもする。

最初は坂井君と噂になったりでもしたら、どんなことをされるのか怖くて不安で仕方なかった。
だから必死に隠していたし、同期会までの間、車で迎えにきてくれていた時もバレないよう細心の注意を払っていた。
なのに、そんな努力も虚しく一気に広まってしまった噂……。

きっとそうなってしまったら、この会社では生きていけないだろうと思っていたけれど、意外に私は図太い人間だったのかもしれない。
陰口もコソコソ話も、そして今みたいなちょっとした嫌がらせも慣れてしまったのだから、人間の適応能力は凄いと思う。
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