毒舌紳士に攻略されて
琴美は顔に似合わず意外に力が強い。
おかげで背中はジンジンと痛む。
擦りたい衝動にかられながらも、手が届きそうにない。
しばし痛みに耐えていると、「でもね……」と言いながら話を続けてきた。

「なにかあったら大変だし。あっ!今日の帰り久し振りに飲みに行こうよ。そこで打開策を考えよう!これ決定ね!」

“決定ね”そう言われては今更断れるはずなどない。
それに予定なんて全くないし。

「分かったよ」

そう返事を返せば琴美は満足気に頷いた。

「じゃあさっさと仕事終わりにしちゃいますか!」

やっと離れてくれて、仕事を再開させたようだ。
その様子にホッと胸を撫で下ろしながらも、いつものペースでは仕事が終わらないと思い、慌てて取り掛かった。



「……やっと終わった」

「お疲れ様」

仕事が終わったのは結局定時を一時間過ぎた時だった。

「ごめんね、待たせちゃって」

「全然!早く帰ろう」

自分の仕事は終わったのにも関わらず、琴美はずっと待っていてくれた。
これ以上待たせるわけにはいかないと思い、急いで先輩のデスクの上に置きに行く。
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