毒舌紳士に攻略されて
そして無言のまま威圧感を与えられる。

「あっ、ありがとう……」

ドアを開けてくれたことにお礼を言いながらも車から降りたものの、やはり無言のままドアと鍵を閉めると歩き出してしまった。

怒っているのかいないのか、分からない。
でも怒っていたら、わざわざドアを開けてくれたりはしないのだろうか……？

真意が見えなくて坂井君の様子を気にしながら二、三歩後ろでついていくとなぜか急に立ち止まった。
そしてまた無言のまま振り返ったものだから、つい身構えてしまう。

「あの……」

ただでなくとも一緒にいることが辛いのに、気まずい雰囲気のままなんて余計に辛くて何か言おうとした時、なぜか坂井君は視線を泳がせ困ったように頭を掻いた。

「あー……その、さ。……このまま俺が勝手に決めた店回るの申し訳ないんだけど……取り敢えず時間もねぇし、今日はそれでもいいか？」

「――え？」

どういう意味？

すると坂井君はますます視線を泳がせる。
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