毒舌紳士に攻略されて
「この歳になるとさ、人を見る目も養われてくるものじゃない?だからなんとなくわかる。坂井って確かに口悪いし、なんか裏がありそうなところもあるけどさ、絶対に人を騙すことはできない人だと思うな。……めぐみだって分かっているんじゃない?」

「……うん」

それだけは断言できるかもしれない。
坂井君は絶対に彼のようなことをしない人だって。

返事を返すと琴美は肩を掴む手を緩めていく。

「なら信じてみてもいいんじゃない?それに今は昔と違うんだよ?なんせ私がいるんだから」

「エッヘン!」と言いながら胸元を叩く姿に、つい笑ってしまった。

琴美の言う通りだ。今の私にはこうやってなんでも話せる琴美がいる。あの時とは違う。

「そうだよね、私には琴美がいるものね」

その瞬間、琴美の顔がパッとなる。

「ならっ――……!」

「でもやっぱ無理だよ。……第一坂井君、最近忙しいとかで全く連絡くれないし、会ってもいないし」

琴美の言葉を遮るようにして出てしまったのは、愚痴。

そうなのだ。あの実家デート以来、坂井君とは会っていなかったりする。
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