毒舌紳士に攻略されて
「これ、なんだか分かるわよね」

そう言いながら見せびらかすように、顔の前で紙をひらひらさせる。

「えっと……私が昨日仕上げた請求書……ですよね?」

さすがに見覚えがある。だって昨日残業までして仕上げたものだし。
でもこれが一体なんだと言うのだろうか?……もしかして昨日、この書類に貼り付けて残した付箋のことを怒っているとか?

あり得る話に先輩がなにを言ってくるのかとドキドキしていると、先輩は書類をマジマジと見始めた。

「そう。これは佐藤さんにお願いした請求書よ。私、佐藤さんの仕事に対する姿勢には一目おいているのよ?だから昨日も佐藤さんにお願いしたの」

いやいや、絶対にそんなこと思っているはずないよね?しかも妙に演技掛かっているし。
とは思いつつも、ここでそんなことを口に出して言えるはずもなく、黙ってより一層言動に演技かかかる先輩の話を聞き続けた。

「それなのに何?この請求書間違いだらけだったんだけど」

「――え?」

嘘。そんなはずない。いくら押し付けられた仕事っていっても仕事には変わりない。
だから何度もミスがないか確認したもの。
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