毒舌紳士に攻略されて
「おかげさまで私、部長に散々叱られたのよね。君は簡単な計算もできないのかって」

そんなはずない。数字を間違えるはずなどない。

みんな顔を見合わせてはクスクスと笑い合っている。
その姿にピンときてしまった。もしかしてただの言いがかりなのかもしれないって。
それを証明するかのように、怒ったという部長の姿はないし。
ただ単に私を困らせて謝らせたいだけなのかもしれない。
それならここは黙って謝ればいいだけの話だ。

そう思い、さっさと謝って琴美と帰ろうとした時。

「あのっ!めぐみはそんな初歩的なミスなんて、しないと思うんですけど」

「は?」

私が謝るより先にまさかの反撃に出たのは、琴美だった。

ポカンとする私とは違い、先輩達は不快そうに表情を歪めた。

「ちょっと黒川さん、なにそれ。なにが言いたいわけ?」

最悪だ。先輩達すっごい怒っている。

「それはもちろん先輩達がしたことですよ」

先輩達が怒っているというのに、負けじと言い返す琴美にギョッとしてしまった。

「ちょっと琴美!」

慌てて琴美を止めるものの、怒りは収まらない様子。


< 171 / 387 >

この作品をシェア

pagetop