毒舌紳士に攻略されて
「琴美、いいから！……気持ちは嬉しいけど、私は大丈夫だから」

「めぐみ……」

先輩達には聞こえないようそっと囁くと、琴美は悲しそうに唇を噛みしめた。

そうだよ、私なら大丈夫。こうやって謝れば全て済む話なのだから。
逆に私のせいで琴美が嫌な思いをしてしまうことの方が、嫌だもの。だからいいの。先輩達の気が済むまでいくらでも頭を下げ続けられる。



「なんで佐藤が怒られているわけ？」

「……え？」

突然聞こえてきたのは聞き覚えのある声。
さっきまで散々騒いでいた先輩達は、急に黙り込んでしまった。

「悪いけどさっきの話、聞かせてもらった。……どうしても俺には佐藤がそんな単純なミス、するようには思えねぇんだけど」

嘘……どうして？

聞き覚えのある声に、ギュッと胸が締め付けられる。

あの実家に呼ばれた日からずっと会っていなかった。
連絡もなかったし、昨日勇気を出してメールを出しても素っ気なかったくせに。
なのにどうしてこんな時に、現れたりしちゃうわけ？


ゆっくりと顔を上げると、そこにいたのはいつになく不機嫌そうな坂井君だった。

「坂井君……」

こんなタイミングで現れちゃうなんて、卑怯すぎる。
まるでヒーローのように現れちゃうんだから――。

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