毒舌紳士に攻略されて
そんなことを考えていると急に坂井君は立ち止まったものだから、勢い余って坂井君の背中に顔をぶつけてしまった。

「……っ!ごめん!!」

鼻に痛みを感じるも、すぐに離れ謝るものの、坂井君は背中を向け黙ったまま。

「あの……坂井君?」

もしかして怒っている?

背中だけでは坂井君が今、何を思っているのか分からない。
不安になり名前を呼ぶも反応はない。
でも少しすると、坂井君は大きな溜息を漏らしゆっくりと振り返った。

「……あのさ、どうしてなの?」

「え?」

主語のない言葉に、坂井君がなにを聞いているのか分からず返事に困っていると、なぜか坂井君が困ったように眉を下げた。

「だから、どうして女のくせに無理するんだよ」

「キャッ」

そう言うと坂井君は繋いだままの手を引き、バランスを崩した私の身体を優しく抱き留めた。
一瞬にして感じる柑橘系の爽やかな香りと、坂井君の体温に胸がギュッと締め付けられる。
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