毒舌紳士に攻略されて
さらに頭上から降りてきた吐息交じりの声に、胸は悲鳴を上げた。

「佐藤が嫌がらせされているってこと、俺が気付いていないとでも思った?」

「……え?」

「普通に気付いていたから。性格悪い女の考えることくらい手に取るように分かるし。そういう女がどこの部署にもひとりくらいはいるもんだろ?」

「え……でも」

だって気付いていなかったんじゃないの?

そう言いたいのに言葉が続かなかった。

次の瞬間急に身体を離されたかと思えば、私の腰に手を回し、鼻と鼻が触れそうなくらい至近距離で見つめてきたから。

「あのさ、こういう時は頼って欲しいんだけど。だからわざとこっちから連絡しないようにしていたっていうのに」

「……嘘」

そうだったの?

「嘘じゃねぇよ。……佐藤に頼って欲しかった。なのに全然頼ってこねぇし」

「え……じゃあどうしてさっき……」

近い距離にうまく言葉が続かない。
ちゃんと聞きたいのに――。
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