毒舌紳士に攻略されて
「それに……」

なにかを思い出したかのように言うと、おもむろに坂井君はそっと私の前髪をかき上げた。

「なっ……!ちょっと!?」

まさかここで前髪を上げられるとは思わず、反応が遅れてしまい、まんまと前髪をかき上げられてしまった。

「やっ、やめて!」

無理無理!おでこだけはあの日以来、必死に誰にも見られないようにしてきたのに!

どうにか前髪を下げてもらおうと思いつつも、背の高い坂井君に私が勝てるはずもない。
私の前髪を上げたまま、坂井君はまじまじとおでこを見ちゃっているし。

最悪だ。絶対笑われるよね。だって自分でもおでこが広すぎるって思うもの。顔のバランスが悪いって分かっているし。

恥ずかしくてギュッと目を瞑ったけれど、坂井君からは意外な言葉が返ってきた。

「……うん、やっぱ佐藤はおでこ出した方がいいと思う」

「え?」

意外な言葉に目を開ければ、坂井君は愛しそうに見つめていた。

「ずっと前から思っていたんだ。どうして前髪でおでこ隠しているんだろうって。上げたらこんなに可愛いのに」
< 184 / 387 >

この作品をシェア

pagetop