毒舌紳士に攻略されて

「それにしても営業部は大変だね。まぁ、うちらも忙しいけどその倍はきっと忙しいよね」

「……かもね」

坂井君は年末が近づくにつれ、忙しさを増していった。
休日出勤もしているみたいだし。それに今日だって遅れて参加するって言っていた。もしかしたら終わる頃に行く形になってしまうかも、とも。

「ちょっとちょっと！なに真面目に落ち込んでいるのよ」

「――え？」

なぜか琴美は私を見ながらニヤニヤしては、肘で突いてきた。

「もー惚けちゃって！顔が物語っているわよ。坂井が遅れてくるなんて寂しいなって」

「えっ！？まっ、まさか！別にそんなこと思っていないし！」

とは言うものの、あながち嘘ではなかったりする。
だって現に少しだけ琴美の言う通り、坂井君が来ないとなると少しつまらないな、と思ってしまったし。
でもそんなことを思ってしまったと悟られないよう、平然を装う。

「まぁ、それもそっか。だって坂井とはつい最近デートしたばかりだもんね」

イシシっと笑いながら、琴美は先ほど同様肘で突いてくる。