毒舌紳士に攻略されて
目の前にあるから揚げに手を伸ばそうとした時、急にそんな言葉が投げ掛けられた。

「だってそうじゃない。幹事は完全に坂井をあっちの会社の子達に自慢したいようだしさ。そういうの、彼女として嫌じゃないの?」

「いや、そもそも彼女じゃないし……」

そうなのだ。
すっかりと同期の間では、私と坂井君が付き合っていることになってしまっている。
何度も否定しても、信じてくれないし。

「またまたー!そういう冗談はいいから!」

「そうだよー。前回の同期会であんなラブシーン見せておいてまだ言っているし」

「別にいいんだよ。確かに坂井は同期の……いや、会社の女子社員憧れの存在だけど隠さなくても」

「そうそう。あの時の坂井を見て、めぐみ一筋なのは痛いほど分かったから」

口々にそう話すみんなに、乾いた笑いしか出てこない。

ほら、こうやって否定したところで誰も信じてくれないんだ。
もう何を言っても無駄な気がして、ひたすら食べ物を口に頬張った。

「あっ、そういえば知ってる?向こうの会社にも坂井並のイケメンがいるらしいよ」

「嘘!いないじゃん」

「それが坂井同様、遅れてくるらしいよ。見たいよねー、坂井とその人どっちがかっこいいか」
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