毒舌紳士に攻略されて
完全に落ちてしまった。
繁華街から少し離れた場所に辿り着くと、そこにはブランコと滑り台しかない小さな公園があった。

走っている途中、いつの間にか涙が溢れてしまっていたけれど、走った今はすっかり涙は乾いていた。

真っ直ぐ家に帰る気分にはなれず、誰もいない公園に足を踏み入れ、ブランコに腰掛けた。
そのまま空を見上げると、冬の夜空には一段と星が輝いて見えた。

どうしてこんなにも空は広くて、世界も広いというのに会ってしまうのだろうか。
彼……石川君と。

少しだけブランコを揺らすと、錆びてしまっているようでギィと鈍い音が静かな公園中に響いた。
空気が乾いているから余計に響いているのかもしれない。

ずっと走っていたおかげで身体は温まっているものの、吐く息は白い。
今はいいかもしれないけれど、あと少ししたら一気に身体は冷えてしまいそうだ。

そう分かってはいるものの、どうしても家に帰るという気持ちにはなれずにいた。
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