毒舌紳士に攻略されて
ブランコを握る手の力が強まる。

大丈夫。
きっと今日だけの付き合いなわけだし、今後も一緒に飲み会を全員でやろうなんて流れにはならないだろうし。
琴美にだけは石川君が例の彼だって後で話して、坂井君にはうまく誤魔化そう。
だって知られたくないもの。高校時代の苦い恋愛もトラウマも。

お母さんに早く帰って来いって言われたとか適当に嘘をつき通そう。


「……おい」

落ち着かせようとブランコを漕いでいると、突然静かな公園にはどす黒い声が響いた。
誰もいない公園に突然聞こえてきた人の声に驚き、勢い余ってそのまま立ち上がってしまった。

小学生のように背筋をピンと伸ばし立ち上がった私の視線の先には、いつになく不機嫌そうに表情を歪ませ、肩で息をする坂井君の姿があった。

「……坂井君？え……どうして？」

“どうしてここにいるの？”と言葉が続かない。
だってまさか追い掛けてきてくれるとは思わなかったから。

しかも坂井君、こんなに寒いのに汗をかいている。それに肩で息をしていて、呼吸も荒い。
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