毒舌紳士に攻略されて
それってそこまでして私のことを探してくれたってことでしょ?

そう分かってしまったら言葉なんて出ないよ。

いま気持ち的にも弱っているからかな?
坂井君が私のことを探してくれていたんだって思っただけで、嬉しくて泣きそうだ。

だからといって本当に泣くわけにはいかず、涙が溢れそうになった瞬間、慌てて視線を落とした。

「ったく、どれだけ人を心配させたと思ってるんだよ」

視線を落としたというのに、あろうことか坂井君に両手で顔を挟まれ、無理矢理上を向かされてしまった。

「ちゃんと顔見せろ」

「……っ!」

必然的に視線を合わせられ、いつになく余裕のない坂井君を捉える。
額には汗が溢れていて、首元にまで浸っているのがよく見える。

本当に心配してくれたんだ。

そう思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「なんでスマホの電源切ってるんだよ」

「えっ!?」

「しかもわざと切っただろ?」

「いや、その……」
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