毒舌紳士に攻略されて

だんだんと怒りが増しているのか、額には怒りマークが浮かんで見える。
不機嫌全開の坂井君を前にしては、さっきまでとは違った意味でまた言葉が出てこなくなる。
しかも両手でしっかりと顔をホールドされている状態だし。

坂井君とはまた違った汗が流れそうになった時、なぜか坂井君の右手が目元に触れた。

えっ！？なっ、何！？

驚きのあまり普段の倍以上瞬きをしてしまう。
その間も坂井君は私の目元を何度も優しく撫でていく。

「なぁ……佐藤にとってあの男は、泣くほど今も忘れられない存在なのか？」

「……え？」

ちょっと待って。坂井君は石川君のこと知らないはず。それに琴美にだって石川君があの時の彼だとまだ知らないはず。
でも坂井君はまるで、全てを知っているかのように話を続けた。

「あの後すぐに佐藤を追い掛けようと思ったんだけど、ちょうど降りてきた黒川に無理矢理連れていかれてさ。……黒川がアイツを問い詰めて、俺も全て聞いたよ」

「う、そ……」