毒舌紳士に攻略されて
まじまじと石川君の顔を見てしまっていたからか、「もしかしてここ?」と赤く腫れている頬を指差した。

「うん、どうしたの?それ。……あっ!もしかして琴美が?」

あり得る。この前石川君の話をしていた時、だいぶ怒っていたし。琴美ならやりかねない。
だけどどうやら違ったようで、石川君は思い出すように苦笑いを浮かべた。

「まさか。さすがに女の子に殴られてもここまで腫れるほど弱くないよ。……彼にやられたんだ」

そう言いながら石川君が指さした先には、同期と楽しそうに談笑している坂井君の姿があった。

「嘘……坂井君が?」

「あぁ。なにも言わずにガツンと一発殴られたよ。彼氏なんでしょ?すっげキレていたし。……よっぽど佐藤さんのこと大切に思っているんだろうね」

そう言うと石川君は、ゆっくりと立ち上がった。

「偶然にしろ、こうやって佐藤さんと再会できてよかったよ。……あの時は本当にごめん」

「ううんっ、それは私も同じだよ」

つられるように立ち上がった。

「私も今日、石川君と再会できてよかった。これでちゃんと前に進めるから。……だから石川君ももう気にしないで」

ずっと後悔されたままなんて、嫌だもの。

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