毒舌紳士に攻略されて
だって私、坂井君の前で泣いて本音ぶちまけちゃったし。……それに石川君から話を聞いた手前、照れ臭すぎる。
全てを私のためにって解釈しちゃうし。それこそ自惚れもいいところだ。
そう分かっているのに、やっぱり最終的にはそこに行きついてしまうんだ。

それはきっと以前からストレートな言葉を言われていたから。
私のこと、本気で好きでいてくれているからって理由に結びついてしまう。

「おい、なに一人でニヤニヤしているんだよ」

「痛っ」

すっかりと妄想の世界へ入り込んでいると、気に食わなかったのか鼻を摘んできた。
すぐに離してくれたものの、鼻に痛みは残っている。
思わず鼻に手を当てていると、坂井君は謝る気配もなくさっさとお店とは逆方向に歩き出した。

「え……ちょっと坂井君どこ行くの!?」

するとピタリと足を止め、なぜか怪訝そうに表情を歪めながら振り返った。

「どこって帰るに決まってるだろ?早くしろ」

「早くしろって言われても、荷物ないし」

「バーカ。佐藤の目は節穴か?」

そう言う坂井君の手にはしっかりと私の鞄が握られていた。

いつの間に!?っていうか「バーカ」とか「節穴」とかずいぶんと失礼じゃない?
< 238 / 387 >

この作品をシェア

pagetop