毒舌紳士に攻略されて
さっきまでの戸惑いも恥ずかしさも吹き飛び、苛々したまま坂井君の後を追い掛ける。

「鞄、すみませんでした！」

そしてわざとらしく坂井君の手から鞄を奪えば、また坂井君は気に食わないと言いたそうに表情を歪めた。

「なんだよその顔は。なに？またアイツに会いに戻りたいわけ？」

「そんなこと一言も言ってないじゃない」

どうしてそうなるのよ！

さっきのイライラワードを思い出してしまい、つい勢いに任せて言ってしまった。

「もしかして坂井君ってば嫉妬してるの？」

「……っ！」

いつもの余裕たっぷりの表情が一瞬にして崩れた。
そして予想に反して電灯に照らされている坂井君の顔は、みるみるうちに赤くなっていく。

「っそうだよっ！わりーかよ！」

そっぽ向き投げやりに放たれた言葉に、目が点状態になる。
だってまさかこんな反応されるとは、予想していなかったし。
いつものように余裕たっぷりに「そんなわけねぇだろ？」とか、逆に清々しく「そうだよ」と言われるものだと思っていたから。

「つーか当たり前だろ？好きな女が昔好きだった男と話していたら、誰だって妬くっつーの！それに心配だってするさ」

そう言うと坂井君はそっと手を握ってきた。
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