毒舌紳士に攻略されて
だって表情だけで伝わってきちゃうから。
お父さんがどれほどお母さんのことを想っているのかが――……。

「気持ちが通じ合ってからは、今までの自分の人生が酷くバカらしく思えたよ。なんて無駄な時間を過ごしていたんだろうってね。……だからだろうな。息子にだけはそんな思いをしてほしくなかった。木苺も俺のような男に育ってほしくなかったんだろうな。ふたりして恋愛に関しての道徳だけは、徹底的に叩き込んだんだ」

「クククッ」と思い出し笑いをするお父さんに、妙に納得してしまう自分がいた。
以前にお母さんから聞いていたけれど、きっと紳士的な部分はお母さんから。そして毒舌なところはお父さんの影響なんだろうな。
しかも徹底的に叩き込まれたのなら、尚更だ。

「そのおかげであんな息子になっちまったわけだ。あいつ、口が悪いくせに変に紳士的だろ?」

「はい」

そこは即答できてしまう。だってその通りだから。

するとお父さんはまた可笑しそうに笑い出した。
< 284 / 387 >

この作品をシェア

pagetop