毒舌紳士に攻略されて
「元気の父親だからとか、そういうの一切ナシにして正直に話してくれていいよ。……やっぱあいつじゃだめかな?好きになれそうにない?」

「お父さん……」

心臓をギュッと締め付けられているようだ。

『好きか、嫌いか』

そう聞かれたら、迷いなく『好き』って答える。
私は坂井君のことが好き――。でも……。

もう一度お父さんを見れば、答えを急かすこともせず、ただ少しだけ困ったように笑いながら待ってくれている。

それだけで坂井君がどれほどお父さんに愛されているのか、痛いほど伝わってくる。
そんなお父さんに嘘などつきたくない。素直にそう思った。

「好き……です」

意を決し、自分の気持ちを素直に伝えると、お父さんを目を見開き驚いた。

「……本当に?」

『好き』と伝えたのに信じられないようで、さらに距離を縮めて聞いてきた。

「はい。……でも、あの……その、坂井君はきっと私のことなんて、本気じゃないと思います」

私は坂井君のことが好き。
でも坂井君の気持ちだけは、素直に信じられない。
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