毒舌紳士に攻略されて
よく親父は、母ちゃんとは運命の赤い糸で結ばれているとか、運命は必ず存在するんだ!とか、ふざけたことばかり言っていると思っていた。
だけど今になって親父が言っている意味が、分かった気がするよ。
つーか信じたいだけなのかもしれない。

彼女との出会いは、運命だったんだって――……。



それから俺は二次募集の高校を受け、合格し、桜は完全に散ることはなかった。
その二次試験にもしかしたら彼女もいるかもしれない。
そんな期待を込めてハンカチを持参し試験に挑んだものの、そこに彼女の姿はなかった。

大学受験の際も、入社試験の際もまた彼女と会えることを期待しては、その期待を裏切られての繰り返しだった。
それでも彼女のことを諦めようという気持ちにはならなかった。

俺もどうやら親父のDNAをしっかりと受け継いでいるようで、あの日の彼女との出会いは運命だったと信じて疑わなかったからだ。

そしてついに、運命の出会いだったことを証明できる日が訪れたのだ。
< 304 / 387 >

この作品をシェア

pagetop