毒舌紳士に攻略されて
「どういうこと?なんでここで親父がでてくるわけ?」

ジリジリと詰め寄られ私が握っていた手は、逆に坂井君に強く握り返されてしまう。

「いや、そのショッピングモールでたまたま会って。そこで色々聞いて、それにここまで送ってきてくれたの」

ありのままの出来事を話すと、坂井君は大きく目を見開き、身体中の力が抜けた抜け殻のようにゆっくりと私に体重を預けてきた。
坂井君の頭が私の肩に触れた瞬間、ドクンと胸が鳴る。

「あっ、あの……!坂井君?」

さっきは自分から抱き着いておいて今更だけど、こうして不意打ちのスキンシップにはどうも慣れていない。
行き場を失くした手でトントンと坂井君の背中を叩くものの、全く反応を見せない。

「あ―……もう、マジで親父最悪だわ」

「え?」

溜息交じりに吐き出された言葉。

坂井君は私の肩に頭を預けたまま話を続けた。

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