毒舌紳士に攻略されて
茫然とする私を前にして、坂井君は意地悪するように顔を覗き込んでくる。

「こっちの心の準備は？」

「こっち」の言葉だけで今の状況から坂井君が何を言おうとしているのか、容易に分かる。

「そっ、それは……！」

無理に決まっている！
なのに今の状況に動揺してしまい、言葉がうまく出てきてくれない。

するとますます坂井君の表情は、悪さをする子供のように変化していく。

「大丈夫。俺も初めてだけどテクだけはしっかりと親父からレクチャーされてるから」

「なっ……！」

少々……いや、かなり難アリな一面もありつつも、そこも全部含めて私は坂井君のことが好きなんだと思う。

「そういう問題じゃない！！」

「じゃあどういう問題だよ」

ニヤニヤしながら聞いてくる坂井君に、からかわれていると理解しつつも冷静さを保っていられない。

きっとこれからもこうやって坂井君に振り回されていくんだろうな。
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