毒舌紳士に攻略されて
「えっと……その、あまり手作りしたことないから、美味しいか?って聞かれたら自信持って言えないんだけど」

「手作り?」

そう聞くと、めぐみは恥ずかしそうに視線を落としたまま深く頷いた。

「あっ」

思わず声が漏れてしまう。

そういえば今日は二月十四日。バレンタインだ。

“手作り”というワードにやっとその答えに辿り着いた。

最近仕事が忙しくて、すっかり忘れちまっていた。
バレンタインというイベントがあることを――。

「……もしかして手作りとか食べない派だった?」

恐る恐る聞いてきためぐみに、ハッと我に返る。

「あっ!いや、違うから。……サンキュ」

そっと受け取ると、めぐみはホッしたように息を漏らし、笑顔を見せた。
付き合い始めて一ヵ月は過ぎているというのに、こういった何気ない仕草や表情に、一々ドキッとさせられてしまう。
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