毒舌紳士に攻略されて
「ありがとう。琴美はまだ終わらないの?」

デスク回りを片づけるものの、琴美はいまだにパソコンと睨めっこ状態。

「そ。残念ながら終わらなくてさ。……あっ、気にせず帰っていいからね。それに今日なんでしょ?同期会やる場所を決めに行くの」

「……そうなんだよね」

これからのことを考えると、どうしても気が重くなってしまう。

同期会というものを月一で開催している私達。
毎回楽しくて、ストレス発散にもなるからいいんだけど、開催場所はクジで決めた幹事ふたりで、毎回順番に決めることになっている。
三十人をふたり一ペアにして、約一年周期で幹事が回ってくるペースだ。
そして今月は私ともうひとりのペアの番。
そろそろ場所を決めなくてはということになり、今日の帰りその同期とふたりで一緒に決めに行く予定となっていた。

「早く行かないと、坂井のことだからもう待ち合わせ場所にいるんじゃないの?」

パソコンキーを打ち込みながら冗談交じりに話す琴美に、最後の頼みだと思い、今まで何度もしてきたお願いを再度してみた。

「あのさ、琴美。やっぱり私と代わってくれないかな?」

顔を覗き込むようにお願いしてみたものの、一切こちらを見ることなくいつもの如くキッパリと答えが返ってきた。
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