毒舌紳士に攻略されて
「佐藤さ、お前自分がモテないからって黒川に嫉妬しているんだろう?だからわざと毎回毎回、無理矢理早くに帰してんじゃねぇの?」

言いがかりにも程がある。いくら酔っ払い相手と分かりつつも、ここまで言われて黙っているわけにはいかない。
拳を握りしめ言い返そうとしたものの、それを許さないと言わんばかりに罵声を浴びせてきた。

「いかにも佐藤ってモテなさそうだもんな!お前さ、処女だろ?」

人をバカにするように、ふたりの制止を押し退けながら話を続ける。

「だから黒川が羨ましいんだろ?それって惨めだってちゃんと理解しているか?」

「……っ!」

悔しい。そんなこと思っているわけないし、みんなの前でこんなにも恥ずかしいこと言われているっていうのに、言葉が出てきてくれない。
いつもそうだ。肝心なところで言えない。
先輩に仕事を押し付けられたって、自分の中で理由を並べて何も言えない。……今だって処女だってことは本当だから――。
だからここで『違う』とは言えない。それだけの理由で怒れもしない。

「高橋!いい加減にしろよ!」

「うっせぇ!」

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