毒舌紳士に攻略されて
そしていまだに状況が掴めていない高橋君を、坂井君は上から汚いものでも見るように見下す。

緊迫した光景に誰もが息を呑む中、坂井君は吐き捨てるように言い放った。

「お前最低だな。心底見損なった」

「……っ!」

濡れた手を近くの紙ナプキンで拭きとると、それをそのまま高橋君に投げつける。

「それと俺も童貞だけど、佐藤みたいにからかいたいのならどうぞ」

え……?嘘。

坂井君は怒りを露わにしたまましゃがみ込み、高橋君の顔を覗き込む。

「人のことたったそれだけのスキルで見下すんじゃねぇよ。経験なくてなにが悪い?経験しているからって仕事が出来るのか?人より優れているのかよ?……そんなわけねぇよな?お前の仕事ぶりを見ていると」

毒舌ぶりを発揮しバカにしたように笑うと立ち上がり、なぜかそのまま私の元へ来ると何も言わず腕を掴まれた。

「えっ?」

なっ、何!?

シンと静まり返っている中、坂井君は何も言わず腕を掴んだまま私を立たせると、近くにあった鞄を持ち出口の方へと進んでいく。
そして引き戸に手を掛けた時、やっとみんなに向かって口を開いた。

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