毒舌紳士に攻略されて
それよりもどうしてバレた?考えていることが。

「言っておくけど、けっこう佐藤って分かりやすいから。すぐ顔に出るよな?」

「嘘っ!」

淡々と話していたけれど私が声を荒げた瞬間、我慢できなくなったようにいきなり吹き出しては笑い出した。

「アッハハハ!だからそれが出ているって言うんだよ」

「坂井君……」

店先でバカにされているというのに、なぜか怒りは湧き起ってこなかった。
だってこんなにも楽しそうに笑う坂井君なんて、見たことなかったから。

通り過ぎる人、店に入る人・出る人みんな不思議そうに坂井君を見ていく中、私は坂井君が落ち着くまで視線を逸らすことなど出来なかった。

「あー……やべ。こんなに笑ったの久し振りかも」

笑い過ぎて涙まで出てしまったようで、目頭を押さえちゃっている。
そんなレアな姿を目に焼き付けている中、不意に手を握ってきた。

「――え?」

驚く私とは違い、坂井君はただ笑っているだけ。
真意の掴めない彼の表情からますます目が逸らせない。


< 55 / 387 >

この作品をシェア

pagetop