毒舌紳士に攻略されて
口ではそんなことを言っているくせに、手は離してくれない。
納得はできる。そもそも坂井君のような人が私の彼氏になりたいとか、冗談にもほどがあると思っていたし。……でも冗談は言わないんだよね?
だったらなぜ――?

ますます分からない。坂井君が何を考えているのか。

混乱する頭。そんな私に坂井君はとんでもないことを言い放った。

「お前さ、俺の嫁になってくれない?」

「…………は?」

混乱する頭などどこかへ飛んでいく。
いや、言葉を脳が理解するのに時間が掛かりすぎて、どこかに飛んでいったのかもしれない。
それくらい衝撃的な言葉に、空いた口は塞がりそうにない。

え……と?いま間違いなく『嫁』って言ったよね?
しかも『俺の』って言った!?

「おい、聞いてるか?嫁になれって言ってるんだけど」

心ここに在らず状態の私に、念を押すように言ってきた瞬間叫んでしまった。

「嘘でしょ!?冗談でしょ!?」

「嘘でも冗談でもねぇから」
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