毒舌紳士に攻略されて
「だめだ！落ちつけ自分！！」

思い出すと堪らなく胸が苦しくなり、あの日の記憶を全て消し去るように首を左右に振る。
それでも簡単には記憶など消えてくれるはずもなく、胸の苦しさは収まってくれない。

そもそも坂井君相手に、これほどドキドキしてしまうのはきっと私には、恋愛経験が少ないからだ。
そう思わないとやってられない。
必死に自分に言い聞かせ、待たせていると分かっているのにこれ以上待たせるわけにはいかないと思い、最後に大きく深呼吸をした。

「……よし！！」

覚悟を決める。
今日一日だけだ。冗談か本気か分からない。でも例え本気だとしても私には坂井君という高スペックな男子と付き合うなんて、無理。
だったら今日が最初で最後だ。
恋愛経験させてもらうって思って、一日乗り切ればいいだけの話。

覚悟を決めドアノブを握りしめておきながら、なかなかドアを開けれない。
でもさすがに行かなくてはまずいと思いゆっくりとドアを時、勢いよくドアが開いた。

「キャッ！？」

ドアノブに手をかけていた私の身体は、そのまま前方に持っていかれる。
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