毒舌紳士に攻略されて
確信めいた目で睨んでくる彼から、咄嗟に視線を逸らしてしまった。

しまった。これだと「図星です」と認めてしまったようなもの。……でも図星だと認めたら認めたで、気まずい。

「そっ、そんなことしていないよ?」

完全に目を合わせるのが怖くて、チラチラと見ながら言うものの坂井君の私を見る目は変わらない。

「嘘つけ。バレバレなんだよ」

「ごめんなさい」

もうどんなに言い訳しようが坂井君相手に、誤魔化せる気がせずすぐに頭を下げて謝ると、大きな溜息を吐かれてしまった。

「謝るなら早く車に乗ってくれない?こっちにも都合があるんだけど」

「……っ!はい」

坂井君に都合があるなら、私にだって都合がある!!
こんなデート、誰も望んでなどいない!!

そう叫びたくなりつつも、悪いのは完全に私。
今は素直に従うしかなかった。

鍵を閉め、しっかりと助手席のドアを開けて待つ坂井君の元へと向かう。
完璧不機嫌なくせして、とことん紳士的に振る舞う彼に尊敬にも似た感情を抱きながらも、「ありがとう」と言いながら、すっかり慣れてしまった車に乗り込んだ。
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