毒舌紳士に攻略されて
「あと五分くらいで着くから」

呑気に片手でハンドルを握りながらそう話す坂井君。
そんな彼の隣で私は、最初の頃のように呑気に助手席で乗っているわけにはいかない状況になりつつある。
それもそのはず。

「あの……坂井君?これは一体どこに向かっているの?」

つい笑顔が引きつる中、恐る恐る問いかける。
だって今走っている場所は、どう考えても近くに商業施設や、デートスポットがあるような場所ではないから。
誰が見ても、どう考えてもここは住宅地だ。

すると坂井君は子供がこれからとんでもない悪戯をするような、そんな妖しい笑みを浮かべた。

「秘密」

その笑顔についゾクッとしながらも、このまま秘密のままでは困る。
いつもの私だったら、ここは押し黙るところだけど今日ばかりは押し黙ったままではいられない。

「秘密とか困る!ちゃんと教えて!……行き先を」

いつになく声を荒げた私に坂井君は一瞬驚いたようで、急に路肩に車を停車させた。
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