毒舌紳士に攻略されて
「サンキュ」

たった一言なのに、苦しいくらい胸はまた締め付けられる。
手のぬくもりと優しい声に、顔を見なくても分かる。……坂井君が今どんな顔をしているのか。

それでも気になってしまい、高鳴る鼓動を落ち着かせながら顔を上げると、予想通り目尻を下げ微笑む姿が視界いっぱいに捉えた。

「……っ！」

顔はみるみるうちに熱くなっていくというのに、金縛りにあっているかのように動けない。
こんな顔見られたくないのに……！

何度も何度も頭に触れるぬくもりは、心地よくてそれがまた私を堪らなく恥ずかしい気持ちにさせる。
本当に私はおかしい。
相手は坂井君なのに、こんなにドキドキしているのはおかしすぎる。
つい最近の私に言ったらさぞかし驚かれるに決まっている。……なのに、どうして気持ちは落ち着かないんだろう。……どうして目に写る坂井君がかっこよく見えてしまうのだろう。

思考回路までおかしくなってしまったのかもしれない。
そんなことさえ考えてしまっていた時、さっきまで優しく微笑んでいた表情は一変した。
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