毒舌紳士に攻略されて
「心構え、ですか?」

「そう!女の子には常に優しく!本当に好きな子としかヤラないように!」

お母さんは人差し指を立てて力説するも、私はただ笑うしかなかった。

ずっと不思議だった。どうしてあんなに毒舌なくせに紳士的なのだろうって。それが今、分かったよ。
坂井君の生活環境にあったんだ。
毒舌なところはきっとお父さんから。そして紳士的なところはお母さんから形成されてきたんだ。

妙に納得していると、お母さんはすっかり料理する手を止めたまま話を続ける。

「そのおかげで主人みたいな最低な男にだけはならなかったみたいで、本当に良かったわ」

お母さんが大きく息を漏らし、安心したその時。

「おい、随分と俺がいないことをいいことに、元気の彼女に色々吹き込んでくれたな?」

「……え?」

坂井君そっくりな声に、一瞬息が詰まった。お母さんの身体は大きく反応する。

「みっ、みっちゃん……いつからそこに?」

私越しに顔を引くつかせながら、声を震わせるお母さん。
そんなお母さんを視界に捉えながらゆっくりと振り返る。
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