もうこれ以上噛まないで
「優ちゃん!!店長が大変なんだ」
そんな電話が入ったのは土曜日の深夜。アルコールを扱う飲食店にとって、一番の稼ぎ時の時間帯である。
そんな時間に……タツキが大変?
私達は付き合っている事は、あの店では公然で……。
だからこそ連絡をくれた、元バイト仲間の檜山君からの電話に……私は慌てて着ていたパジャマを脱ぎ捨てた。
そう、既に深夜……私は何も知らず、すっかり寝る体制に入っていたのだから。
暗い部屋の入り口に、置いてある鏡にちらっと映る自分。
その背中には茶色い斑点がまだらに残っている。
その全てが……愛しい人から貰った傷跡。
その跡にそっと手を回し触れると……微かにタツキの残した痛みが伝わった。