イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 瑠海が私の瞳を何か確認するかのように覗き込む。

「……後で返してって言っても返しませんよ?本当にいいんですか?」

「もう君のだよ」

 瑠海が優しく微笑する。

 この人、こんな風にも笑えるんだ。

「ありがとうございます。では、遠慮なく今日から使わせてもらいますね?冗談っていうのはなしですよ。本当に、本当に!」

「耳が痛いから、そんなに大きな声出さないでくれる?今日は三十分後にホテルにベルガー氏を迎えに行くから、車の準備を頼むよ。落ち着いたらコーヒー持ってきて」

「はい、わかりました!」

「だから、声が大きい。小学生か、君は」

 瑠海がケラケラ笑いながら副社長室に戻っていく。

「ああ、シャーリー、もう絶対に私から離れないでよ」

 瑠海にもらったシャーリーにチュッとキスをする。

 信じられない。

 シャーリーがまた私のところに来てくれた!
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