イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい

　こいつ、私が困ってるのを知ってて言ってる。

　性格悪！

「パスポートを持っていないので、他の秘書を同行させてはどうでしょう？」

怒りを抑えながら、淡々とした口調でそう進言する。

「同行出来ないなら首だよ。使えない部下はいらない」

　ニヤリとしながら残酷な言葉を平気で口にした。

「パスポートがないなら今からすぐに手続きするんだね。二週間あれば十分だろう？それまで待ってあげるよ」

「瑠海、そういう言い方はマズイよ」

　社長のイーサンが険悪なムードを察して割って入るが、瑠海は聞く耳持たない。

「お前は引っ込んでてくれないかな。彼女は俺の部下だよ」

「瑠海、桃華は優秀だよ。きっと君も気に入る」

　ずっと傍観していた前田さんが穏やかに言う。

　すると、瑠海はフッっと微笑した。

「亮治がそう言うなら期待してるよ、桃華。がっかりさせないでね」