イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 男は桃華に問いかける。

 すると、彼女は男に向かってシーっとでも言うように人指し指を口に当てた。

 もう遅いよ。

 どうやら桃華はこの男に俺の事を愚痴っていたらしい。

「ええ、その上司です。僕がいないとこでも僕の話をしてるんだね。嬉しいよ」

 口をあんぐり開けている桃華に向かって優しく微笑み、彼女のさらさらの黒髪にそっと口付ける。

 すると、桃華は固まった。

 この程度で固まられては困る。

 まだまだこれからだよ、桃華。

 木村という男は冷静に俺達の方を見ている。

 まあ、桃華の様子はぎこちないし、本当の恋人とは思っていないだろう。

 それならば、牽制しておくか。
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