イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「悪い子だね。ふたりきりになったらお仕置きだよ」

 ちょっと身を屈めて桃華の耳元で甘く囁く。

 わざとあの男に聞こえるように。

 男は無表情だ。

 俺はまだ固まっている桃華にそのまま顔を近づけ、軽く口付けた。

 柔らかいその唇。

 桃華の目は驚きで見開かれたまま。

 その彼女の瞳には俺が映っている。

 男はそんな俺達を取り乱す事なく見ているが、桃華にキスした時は若干顔が歪んだ。

 少なくとも衝撃は与えられた。

 今日はこれで良いだろう。

 桃華が正気に戻ってとんでもないことを言わないうちに撤収だな。

「悪いがこれで失礼するよ」
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