イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 道理で瑠海が私のスマホを持ってたわけだ。

「何を勝手に……」

 私が瑠海をキッと睨み付けると、ようやく瑠海は携帯を返してくれた。

「心配してるといけないから仕方なくだよ。俺も妹いるし、気持ちはわかるからね。でも、これで俺と桃華が付き合ってるってお兄さんに証明できたよ」

「か、帰ります」

 今は木村さんとの事はどうでもいい。

 早くひとりになって頭を冷やしたい。

「またオフィスで」

 瑠海が微笑するが、そんな彼を無視して彼の家を出る。

 スマホを確認すると、兄からメールと着信が1件ずつ。

 そうだよね。

 二十七歳とはいえ、彼氏作った事のない私が外泊したら何かあったかと思うよね。

しかも、兄が帰国している時にこんな失態をやらかすなんて、タイミング悪過ぎだよ。

 瑠海とは家が近かったのを思い出して、スマホのナビでなんとか自宅まで歩いて帰った。
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