イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「言ってないのね。桃華が可哀想。私が帰ってからはどうしたの?」

「野暮な事は聞かない」

 意味あり気にフッと微笑すると、セーラは溜め息をついた。

「何もなかったわけじゃないんだ?」

妹の質問を口元に笑みを称えてはぐらかす。

「さあ?どうだろうね」

 自分の寝室にわざわざ寝かせたのは、桃華に思い知らせるためだった。

 自分が上半身裸だったのはただの演出。

 それから……キスマーク。

 桃華は気づいただろうか。

 ただ寝て起きただけなら、俺と寝たなんて思わないだろう。

 だが、キスマークがあることでリアリティーが増す。

 気づいたとしたら、今頃頭を悩ませているはずだ。

 俺と寝たのか、寝てないのか。

 そうやって、男を意識していけばいい。

 彼女は恋愛から逃げている。
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