イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 自分の殻に閉じ籠って、男を見ようとしない。

 俺が顔を近づけると、桃華はいつも俺から視線をそらした。

 自分のテリトリーに男がいるのが怖いのだ。

 今までずっと無視してきた男が自分のテリトリーにいる。

 彼女には未知の世界。

 だから、桃華の兄も木村という男と桃華をくっつけようとしたのだろう。

 だが、俺は桃華の固い殻にヒビを入れた。

 手も繋いだ。

 キスもした。

 一緒に寝た。

 そのうち彼女は男を意識するようになる。

 それは木村じゃない。

 だから、今朝桃華のスマホが鳴った時、 " 兄 " という表示を見て迷わず電話に出た。

「もしもし、瑠海・アングラードです」
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