イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 一瞬間があった。

『……どうして妹の携帯に君が出る?』

ひどく冷淡な声が耳に届いた。

「桃華を起こしたくなかったんですよ。彼女はまだ隣で寝ています」

『……公私共に妹がお世話になっているようだね。だが、妹でなくても、君なら他にいっぱい女はいるだろう?妹では君の相手はできないよ』

「桃華を過小評価してますよ。それとも、俺は彼女に相応しくないとでも言いたいのかな?」

『そうだとしたら?』

 電話の向こう側で桃華の兄がフッと笑った。

「桃華の人生ですよ。選ぶのは彼女だ」

『正論だが、あれは男慣れしていない。俺が見極める必要がある』

こいつ……過保護過ぎるだろ?

妹を心配する気持ちはわかるが、そこまで干渉するのはどうかと思う。

「もっと桃華を信じたらどうですか?彼女だって成長するんですよ」

穏やかな口調でそう提案するが、相手は無言になる。だが、俺は構わず続けた。

「干渉せずに見守ってみてはどうです?お膳立てした恋なんて桃華は受け入れないと思いますよ」
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