イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい

「そもそも温もりなんて知りません」

「昨日まではね」

　すかさず否定して止めを刺せば、桃華は気まずそうに俺から目を逸らす。

今朝のことを思い出したのだろう。

「フランス出張が終わるまで君の質問の答えはお預けだよ。それまで俺の事で頭をいっぱいにして悩むといい」

「そんな……ずるい」

　桃華が悔しそうに唇を噛み締める。

「セーラにも今日同じ事を言われたよ。男はずるい生き物なんだ」

ニッコリしながら肯定すれば、彼女は俺の態度が気に食わなかったのか、真っ直ぐな目で俺を見て言い放った。

「訂正します。あなたは卑怯な男よ！」

「卑怯で結構。君の瞳にこうして俺が映ってる限りはね」

　俺が桃華に近づいてその頬に触れると、かすかに彼女は震えた。

　そうだ。